【読書レビュー】『下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉』 内田 樹
このブログでは、毎回自身で読んだ本について、その内容と骨子をまとめたものを掲載していくものである。
■お薦め度:★★★★★
■タイトル:『下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉』
■著者:内田 樹
1950年生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。
<著者の主張>
学びからの逃走・労働からの逃走
消費(等価交換)が教育や労働に持ち込まれることが問題の根本
<ポイント>
エーリッヒ・フロムの「自由からの逃走」は長い歴史的苦闘の成果としてようやく獲得された市民的自由を20世紀の先進国の市民たちが捨て値で叩き売って独裁政権や機械化に屈服する倒錯する分析をした心理学の古典。
「学びからの逃走」は先人の民主化と人権拡大の営々たる努力の歴史的成果としてようやく獲得された「教育を受ける権利」を、まるで無価値のもののように放棄している現代の子供のありようのこと。
分からないことをそのままにする若者
人間は何かを見たけれど、それが何かであるかを決定しないことができる
⇒意味が分からないことにストレスを感じない (才能)
労働から入ったか消費から入ったか
⇒現代人は消費から社会活動に参加することに慣れている
等価交換の考え (ビジネス、買い物)
悪いことをしても悪いことをした事自体を否認するようになった。
⇒ごねた方が得だから(クレーマーの増加)
学び について
自分が何を学んでいるのか知らず、その価値や意味や有用性を言えないという当の事実こそが学びを動機付けている
⇒子供は学習の主権的で自由な主体であるのではない
「自分探し」
自分を知らないところにいく。本当の目的は「出会う」でなはなく、私についてこれまでの外部評価をリセットすることにあるのでは。(自己評価と外部評価とのズレ)
⇒根底には世間のやつらは全然俺のことをわかっちゃいないという思い。(うまくいかない)
「自立」は名乗りではなく、呼称です。
自己評価について
第一は親の学歴と子供の自己評価は関連する
第二学習時間と自己評価は関連する
「自分のことは自分が決める」という自己決定権への固執
消費行動は本質的に無時間的な行為
⇒すぐに答えを求める
人間の作り出したすべての制度ー親族、言語、神話、宗教、経済活動などーの起源は闇の中に消えていて、誰もそれを言うことができない。確かなことは、「他者と交換する」ことへの灼けつくような欲望がすべての社会制度の根本にあることだけ。
教育のアウトカムは測定不能
⇒売買のように教育を提供することはできない
⇒商売と異なり変革を求めるもの
■用語
悖る もとる 道理にそむく。反する。
自信 self esteem